こんにちは。ピクテ投信をご存知でしょうか。投資信託を勉強されている方は、知っているかもしれません。
最近では、低コストアクティブファンド「iTrustシリーズ」で認知度が上がっているかもしれません。
「知らない」というあなたは、これから注目しておきたい運用会社なので、知っておいて損はありません。
そのようなあなたのため、ピクテ投信iTrustシリーズの知っておきたい特徴・信託報酬・リターンを解説します。
ピクテ投信とは?
ピクテについて、簡単に理解しておきましょう。
ピクテは、1805年にスイスのジュネーブに設立されました。ナポレオン時代の貴族たちが、世界の混乱の中、財産を守るために頼ったのがピクテをはじめとするプライベートバンクでした。そこから、ピクテの歴史が始まります。
ピクテグループの特徴は、次の4つです。
- お客様本位の経営
- 独立系プライベートバンクとして世界最大級
- 210年以上の経験
- 盤石な財務基盤による高い信用力
通常、会社には株主がいて、その方々への利益還元を重視して経営されます。上場企業であれば、なおさら。しかし、銀行や運用会社でその経営をしてしまうと、お客様の利益が減ってしまいます。
ピクテでは、はっきりと「株主よりもお客様を重視」と公言しています。これまで証券会社では、投資信託の購入時手数料で稼ぐビジネスモデルでした。しかし、昨今では購入時手数料がゼロが主体になりつつあります。
こうなったときに、どうやって稼いだら良いかというと信託報酬です。信託報酬の一部が運用会社の売上となります。ここで、大切なのが信託報酬の高さよりも、純資産の規模です。
例えば、信託報酬が年1%だとします。1億円のファンドなら売上は100万円ですが、100億円のファンドなら売上は1億円になります。1億円でも、100億円でも運用の手間は変わりません。
お客様が解約時に、保有株を売却して現金に充てる必要があるため、ファンドの規模が小さい方が、難しいかもしれません。
もし、株主重視の運用をしていたらどうでしょうか。ファンドに人気が出ず、資金が集まらない、つまり純資産が増えずに売上も小さくなります。いずれ人件費の方が高くなり、ファンド解散になるかもしれません。
したがって、これからの時代はピクテをはじめとするお客様本位の経営や運用をする会社が大切になってくるでしょう。
そのような視点の経営があるため、運用資産総額が60兆円と大規模になり、200年を超える信頼関係、銀行としての格付もAa2(ムーディーズ・インベスターズ・サービス)と高い評価となっています。
日本法人は、1981年日本経済や日本株式の調査を目的に設立されました。
1987年から機関投資家向けの資産運用サービスを提供、1997年から投資信託業務に参入しています。
それから約20年以上の実績を経て、資産総額は2.48兆円と大規模になっています。[2020.3時点]
ピクテ投信iTrustシリーズとは?
iTrustシリーズは、「世界の富裕層に愛されるピクテの運用を、資産形成に取り組む投資家のみなさまにお届けしたい」という想いから誕生しました。
購入時手数料がゼロ、株式型アクティブファンドです。
ポイントは、「資産形成」という部分です。これまでピクテは、どちらかというと富裕層向けの「資産運用」のための商品を提供してきました。すでに大きいお金を持っている人が、資産を守るためです。
一方、iTrustでは、資産形成、つまり資産を増やすための商品と捉えられます。
そのため、コストである購入時手数料はゼロに、後述する信託報酬も比較的低く抑えられています。
iTrustシリーズは大きく分けて、2種類の商品がある!
iTrustシリーズは、11本のファンドがあります。[2020.5.31時点]
一般的な投資対象のファンドとして、次の4本があります。
- 日本株式[愛称:日本選抜-シェアNo.1企業厳選-]
- 世界株式[愛称:世界代表-勝ち組企業厳選-]
- 新興国株式[愛称:働きざかり-労働人口増加国限定-]
- インド株式
メガトレンドテーマを投資対象のファンドとして、次の7本があります。
- ロボ
- バイオ
- プレミアム・ブランド
- エコイノベーション[愛称:EV、エコロボなど様々な環境テーマが投資対象]
- セキュリティ
- 世界公益株式(為替ヘッジあり)
- 世界公益株式(為替ヘッジなし)
これらのファンドは、10年~15年継続するメガトレンドを投資対象として、長期的な資産の成長を目指しています。
ピクテでは、コペンハーゲン未来学研究所の助言を受け14の「メガトレンド」を策定しています。
- ネットワーク経済
- サステナビリティ(持続可能性)
- 知識重視の社会
- 無形化
- 民主化
- 高速化&複雑化
- 技術革新
- 経済成長
- 個別化
- 商業化
- グローバル化
- 二極化
- 医療健康への関心
- 人口動態
これらの中から、成長が期待できる分野について、ファンド化されています。メガトレンドは、将来企業や国々に何が起きようとも、世界経済に継続的かつ重要な影響を与えるとピクテは考えられています。
より詳しく理解したい方は、動画を見ましょう。
一般的な投資対象のiTrustの特徴・信託報酬・リターン
一般的な投資対象のiTrust 4本について、各ファンドの特徴、信託報酬、純資産、リターンを解説します。
iTrust日本株式は、日本のナンバーワン企業に投資されるファンドです。
ピクテでは、ナンバーワン企業の定義として、優れたブランド力、技術力、商品・サービス開発力、マーケティング力を有し、業界トップシェアを誇る企業としています。
1年~1年半先の企業の利益成長に着目し、高い利益成長が期待できる銘柄に厳選投資を行っています。
組入れ銘柄として、ニトリ、セコム、三井不動産、日立物流、東レ、トヨタ、信越化学工業などがあります。
iTrust世界株式は、高い競争優位性をもつグローバル優良企業の株式に個別投資するファンドです。
優良企業とは、世界的にブランド名を持ち、強力なマーケティング・販売網を構築、高い競争優位性をもつ企業と定義されています。
運用レポートによると、投資地域は次の通りです。[2020.4.30時点]
- 北米:56.3%
- 欧州:31.7%
- 日本:4.7%
- 太平洋(日本を除く):2.2%
- 新興国:3.2%
- コールローン等・その他:1.9%
組入れ銘柄として、マイクロソフト、アルファベット(Google)、アップル、VISAなど世界有数の企業があります。
iTrust新興国株式は、労働人口が増加している新興国に選別して投資するファンドです。
労働人口とは、15歳~64歳を指します。対象国は、インド、ブラジル、南アフリカ、インドネシア、マレーシア、メキシコ、フィリピンなどがあります。
運用レポートによると、資産配分(投資国)上位は次の通りです。[2020.4.30時点]
- インド:20.4%
- ブラジル:16.9%
- メキシコ:14.0%
- 南アフリカ:10.8%
- アラブ首長国連邦:9.6%
iTrustインド株式は、中長期的に成長ができるインド企業に投資するファンドです。
インド上場企業、またはインドでビジネスをする企業は5000銘柄あります。このうち、時価総額と流動性から350銘柄に絞り込まれます。
さらに成長性、収益性、リスク管理等様々な分析がなされ、25~30銘柄に集中投資されています。
運用レポートによると、業種別の資産配分上位は、次の通りです。[2020.4.30時点]
- 金融:40.5%
- 情報技術:22.0%
- ヘルスケア:9.9%
- 一般消費財・サービス:7.1%
- 資本財・サービス:3.8%
生活の基盤である金融(銀行、保険、年金、投資商品)の企業が多く含まれています。また、ソフトフェアなどの情報技術と成長が著しい企業も含まれています。
各ファンドの信託報酬と純資産は次の通りです。[2020.5.29時点]
信託報酬 | 純資産(億円) | |
日本株式 | 0.979% | 11.02 |
世界株式 | 0.979% | 20.06 |
新興国株式 | 1.1775% | 3.81 |
インド株式 | 1.4998% | 11.87 |
日本株式と世界株式は、0.979%と他社のアクティブファンドよりもやや低めに設定されています。
新興国株式、インド株式も、選別投資されているアクティブファンドですので、やや高めに感じるかもしれませんが、適正水準だと思います。
純資産については、まだできて間もないこと、日本での認知度が低いこと、積立NISAの対象ではないことから、やや小規模です。
各ファンドの基準価額の推移は、次の通りです。[2020.5.29時点]
各ファンドで、ファンドの運用スタート日が異なります。
- 日本株式:2016.6.30~
- 世界株式:2016.2.19~
- 新興国株式:2017.4.28~
- インド株式:2018.4.3~
各ファンドのリターンは、次の通りです。[2020.5.29時点]
リターンは、あくまで一時点での結果なので、参考程度に見ておきましょう。
1年 | 3年(年率) | |
日本株式 | 7.52% | 1.13% |
世界株式 | 5.30% | 4.90% |
新興国株式 | -31.38% | -14.10% |
インド株式 | -22.04% | --- |
2020年2月末~3月末に起きたコロナショックの影響で、株式市場が大きく下落しました。
2020年5月になって、日本株式や先進国株式は、だいぶ株価が戻ってきました。一方、新興国はまだ下落したままです。
直近1年のリターンでは、日本株式+7.52%と世界株式+5.30%とプラスリターンでした。
一方、新興国株式は-31.38%、インド株式は-22.04%と大幅にマイナスでした。
新興国株式に投資を考えている方は、短期的には大きな変動があるリスクを認識しておきましょう。
メガトレンドテーマのiTrustの特徴・信託報酬・リターン
メガトレンドテーマのiTrust 7本について、各ファンドの特徴、信託報酬、純資産、リターンを解説します。
iTrustロボは、日本を含む世界のロボティックス関連企業に投資されるファンドです。
ロボティックスとは、3Dプリント、輸送、産業用ロボット、人工知能、レスキュー、医療補助・介護と多岐にわたります。
Boston Consulting Groupの推計によると、ロボティックスの市場は、2014年では670億米ドルでしたが、2025年には870億米ドルになるとされています。
運用レポートによると、投資地域は次の通りです。[2020.4.30時点]
- 北米:63.9%
- 日本:14.9%
- 欧州:11.7%
- アジア・パシフィック他:0.0%
- コールローン等・その他:9.6%
組入れ銘柄として、米国のアルファベット(Google)やインテル、ドイツのシーメンス、日本では日本電産があります。
iTrustバイオは、世界のバイオ医薬品関連企業に投資されています。
一般の医薬品と比較して、参入障壁が高く、高単価で販売されています。そのため、株価の上昇にも期待されています。
一方で、医薬品には開発コストも多大になることが多く、臨床試験などでうまくいかず開発中止などいなると、敏感に株価の下落にも影響を及ぼしています。
運用レポートによると、投資国上位は次の通りです。[2020.4.30時点]
- 北米:94.8%
- スペイン:3.3%
- 中国:1.4%
- フランス:1.1%
- 英国:0.1%
ほぼ米国です。治療薬としては、がん領域や免疫領域が多かったです。
iTrustプレミアム・ブランドは、世界のプレミアム・ブランド企業に投資されるファンドです。
プレミアム・ブランド企業とは、流行を創造するデザインや最高品質などに基づくブランド力により、消費者に幸福感、優越感などの感情をもたらすことができる
商品・サービスを提供している企業を指します。
一般企業と比べ、ブランド企業は価格競争なく、ブランド自体に価値があるとされ、高単価でも売れるため、高収益を維持できています。
運用レポートによると、投資地域は次の通りです。[2020.4.30時点]
- 北米:47.8%
- 欧州:45.4%
- 日本:2.2%
- コールローン・その他:4.6%
ブランドと言えば、なんとなくヨーロッパというイメージ通りの投資配分です。米国のナイキ、VISA、アメリカンエクスプレス、フランスのロレアル、ルイヴィトンが投資対象です。
日本では、資生堂に投資されています。
iTrustエコイノベーションは、世界の環境関連企業に投資されるファンドです。
環境関連とは、電気自動車、エネルギーの効率化、水供給テクノロジー、汚染防止、廃棄物処理など多岐にわたります。
運用レポートによると、環境テーマ別の資産配分上位は、次の通りです。[2020.4.30時点]
- 電気自動車:33.6%
- エコ・ロボティックス:40.1%
- 再生可能エネルギー:24.6%
- コールローン・その他:1.7%
半分以上、電気自動車関連となっています。オランダのセミコンダクターズ、米国のテスラ、日本の日本電産に投資されています。
iTrustセキュリティは、世界のセキュリティ関連の企業に投資されるファンドです。
セキュリティとは、「暮らしの安心」、「移動の安心」、「情報の安心」といったように生活の基盤となった産業です。
運用レポートによると、投資地域は次の通りです。[2020.4.30時点]
- 北米:79.2%
- 欧州:13.1%
- 日本:1.9%
- アジア・パシフィック他:1.8%
- 新興国:1.6%
- コールローン・その他:2.4%
分析機器や検査機器、試薬を販売するサーモフィッシャー、水処理・清掃・消毒用ソリューション・害虫駆除等のサービスを提供するエコラボ、インターネットセキュリティのシマンテックなどに投資されています。
iTrust世界公益株は、主に先進国の高配当公益企業に投資されるファンドです。
公益企業とは、電力、ガス、水道、電話・通信、運輸、廃棄物処理など私たちの生活にとって不可欠な産業です。
世界公益株には、為替ヘッジあり(H有)と為替ヘッジなし(H無)がある点にご留意ください。
運用レポートによると、業種別の資産配分上位は、次の通りです。(H有より抜粋)[2020.4.30時点]
- 電力:54.7%
- 総合公益事業:33.2%
- 石油・ガス・消耗燃料:3.7%
- 水道:1.9%
- 陸運・鉄道:1.6%
半数以上が電力会社です。もはや電気がないと暮らしていけませんしね…。組入れ銘柄の上位10位の配当利回りは、2.1%~5.4%と高配当企業に投資されていました。
各ファンドの信託報酬と純資産は次の通りです。[2020.5.29時点]
信託報酬 | 純資産(億円) | |
ロボ | 1.463% | 44.96 |
バイオ | 1.463% | 4.34 |
プレミアム・ブランド | 1.463% | 2.19 |
エコイノベーション | 1.463% | 2.21 |
セキュリティ | 1.463% | 4.82 |
世界公益株(H有) | 1.111% | 1.04 |
世界公益株(H無) | 1.111% | 2.04 |
各メガトレンドファンドは、1.43%~1.46%と他社のアクティブファンドと同じくらいです。世界公益株のみ、1.09%とやや低めに設定されています。
純資産については、iTrustロボは人気で42億円を突破していますが、それ以外はまだできて間もないこと、日本での認知度が低いこと、やや小規模です。
各ファンドの基準価額の推移は、次の通りです。[2020.5.29時点]
各ファンドで、ファンドの運用スタート日が異なります。
- ロボ:2016.2.19~
- バイオ:2016.2.19~
- プレミアム・ブランド:2017.7.31~
- エコ:2017.9.15~
- セキュリティ:2018.12.21~
- 公益株(H有):2019.5.31~
- 公益株(H無):2019.5.31~
各ファンドのリターンは、次の通りです。[2020.5.29時点]
1年 | 3年(年率) | |
ロボ | 22.89% | 12.46% |
バイオ | 22.58% | 4.60% |
プレミアム・ブランド | 3.91% | --- |
エコ | 19.43% | --- |
セキュリティ | 11.87% | --- |
公益株(H有) | 2.67% | --- |
公益株(H無) | 1.61% | --- |
2020年2月末~3月末に起きたコロナショックの影響で、株式市場が大きく下落しました。2020年5月になって、だいぶ株価が戻ってきました。
メガトレンドiTrustは全て、プラスリターンでした。
直近1年のリターンでは、特にロボ+22.89%、バイオ+22.58%、エコ+19.43%と大幅にプラスでした。
セキュリティ+11.87%、プレミアム・ブランド+3.91%とコロナ渦でもプラスを維持してます。
公益株は守り株式に投資しているため、リターンは小さめです。
直近3年のリターンでは、ロボが+12.46%とこちらも大幅なプラスです。
これまで、「テーマ型の投資信託はあまりよくない」と言われがちでした。しかし、長期的なメガトレンドに焦点を当てたピクテiTrustシリーズは、大きなリターンを得ていました。
一つの投資先として検討しても良いかと思います。
まとめ
ピクテ投信iTrustシリーズを紹介しました。iTrustシリーズには、一般的な投資対象として、日本株式、世界株式、新興国株式、インド株式があります。
また、メガトレンドテーマとして、ロボ、バイオ、プレミアム・ブランド、エコ、セキュリティ、公益株(H有・無)があります。
まだ、設定から月日が経っていないファンドもありますが、今後注目しておきたいファンドシリーズの一つです。