こんにちは、永松です。ご存知のように、累進的配当政策とは、原則「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」とする配当政策です。
最悪でも配当維持されますし、すでに保有している銘柄で有れば、年々配当利回りが上昇します。
「そんな夢のような銘柄あるのか」と思いますが、あるんですよね。あなたもそれを知って、どんな銘柄があるんだろうと気になったのではないでしょうか。
そんなあなたのために、累進的配当政策を掲げる日本株を紹介します。
次の4銘柄です。[2020.7.31時点]
- いちご(銘柄コード:2337)
- 伊藤忠商事(8001)
- 三菱商事(8058)
- 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
それぞれについて、配当利回り、配当方針、配当実績、配当性向(当期利益ベース、フリーキャッシュフロー(CF)ベース)、配当成長率を分析しています。
「累進的配当政策」を掲げる銘柄を見つけ次第、更新していきます。
いちご
いちご(2337)の業種分類は、不動産業です。
事業は、アセットマネジメント(J-REIT、私募不動産ファンド)、心築(不動産賃貸、不動産再生)、クリーンエネルギー(太陽光)の3本柱です。
配当利回りは、株価248円(2020.7.31終値)で、予想通り7円とすると、2.82%です。
配当方針
株主関連情報 | いちごに、「累進的配当政策」を導入している旨がしっかりと記載されています。
また、「株主資本配当率(DOE)3%以上」を配当の基準にしています。配当性向は、一般に当期利益ベースで計算されるため、期ごとに配当金が変動します。
そのため、最近では、株主資本に対してどの程度配当を支払っているかを示すDOEを使う企業が増えています。
計算式は、次の通りです。
DOE(%)=年間配当額÷株主資本×100
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年1回
- 配当権利確定日:2月末(中間配当がある場合は、8月末)
2013.2期~2021.2期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2020.7.31時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.2 | 1.00 | --- |
2014.2 | 1.10 | 10% |
2015.2 | 1.30 | 18% |
2016.2 | 3.00 | 131% |
2017.2 | 5.00 | 67% |
2018.2 | 6.00 | 20% |
2019.2 | 7.00 | 17% |
2020.2 | 7.00 | 0% |
2021.2(予想) | 7.00 | 0% |
2013.2期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率も、2014.2期~2019.2期は、毎年10%以上増配されています。特に、2016.2期は、対前年比+131%とかなりの増配です。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
日本では、配当性向を当期利益ベースで算出します。しかし、最近学んだこととして、米国株投資ではフリーCFベースで分析されます。私はこれを日本株にも応用しています。
フリーCFとは、営業CF+投資CFで算出される数値で、簡単に言えば、企業が自由に使える現金です。
フリーCFは、新たな設備投資、借入金の返済、内部留保、そして配当に使われます。そのため、配当株投資では重要な分析対象となりえます。
フリーCFが潤沢にあれば、配当の増額にも期待できます。一方、フリーCFが少ないのに配当を維持していたら、「そろそろ減配が近づいているかもしれない」と事前にリスクを察知できます。
2016.2期~2021.2期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、259,264,702株(2020.2末時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.2 | 12,925 | -51,706 | 12% | --- |
2017.2 | 14,894 | 9,614 | 17% | 26% |
2018.2 | 14,018 | 4,958 | 22% | 61% |
2019.2 | 15,373 | 6,160 | 23% | 57% |
2020.2 | 8,201 | 1,629 | 43% | 217% |
2021.2(予想) | 3,500 | --- | 101% | --- |
当期利益ベースでは、2016.2期~2020.2期まで、100%以下で安全圏でした。
フリーCFベースでは、2016.2期はマイナスのため、算出できませんでした。フリーCF以外の資金で、配当を支払っていたということです。
2017.2期は、26%で超安全圏でした。2018.2期、2019.2期は100%以下で安全圏でした。しかしながら、2020.2期は、217%と大幅に100%を上回っているため、注意水準です。
直近の決算資料(2020.7)では、当期利益が8,000~3,500(百万円)と予想されています。仮に、最低の3500(百万円)だったとすると、当期利益ベースでも100%を上回るため、やや注意が必要です。
フリーCFの動向には十分に留意しておきましょう。
伊藤忠商事
伊藤忠商事(8001)の業種分類は、卸売業です。
非財閥系の総合商社大手で、繊維、食料、エネルギーなどを取り扱っています。
配当利回りは、株価2300円(2020.7.31終値)で、予想通り88円とすると、3.83%です。
配当方針
株主還元(配当・自己株式の取得)|伊藤忠商事株式会社に、次の2点が記載されています。
- 配当性向の段階的引き上げ
- 自己株式取得の積極活用
配当性向は、30%を目途とされています。明確に「累進的配当政策」とは記載されていませんが、「段階的」がそれに該当します。
1億株を目途して、自己株式取得し、自己株式消却をすることで、株数を減らしています。これにより1株当たりの利益EPSが向上させています。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2021.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2020.7.31時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 40.00 | --- |
2014.3 | 46.00 | 15% |
2015.3 | 46.00 | 0% |
2016.3 | 50.00 | 9% |
2017.3 | 55.00 | 10% |
2018.3 | 70.00 | 27% |
2019.3 | 83.00 | 19% |
2020.3 | 85.00 | 2% |
2021.3(予想) | 88.00 | 4% |
2013.3期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率は、2015.3期のみ維持でしたが、その他は着実に成長しています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2021.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,584,889,504株(2020.3末時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | 240,376 | -137,856 | 33% | --- |
2017.3 | 352,221 | 308,387 | 25% | 28% |
2018.3 | 400,333 | 131,862 | 28% | 84% |
2019.3 | 500,523 | 677,700 | 26% | 19% |
2020.3 | 501,322 | 629,367 | 27% | 21% |
2021.3(予想) | 400,000 | --- | 35% | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期~2020.3期まで、25%~33%とブレも少なく、100%以下で安全圏でした。
フリーCFベースでは、2016.3期はマイナスのため、算出できませんでした。
2017.3期~2020.3期は、21%~84%と100%以下で安全圏でした。2018.3期を除き、30%以下と安定していました。
直近の決算資料(2020.5)では、当期利益が400,000(百万円)の-20.2%と予想されています。それでもなお、当期利益ベースの配当性向は35%とまだまだ安全圏です。
フリーCFの動向に留意が必要ですが、継続して配当が支払われると考えています。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループ(8316)の業種分類は、銀行業です。
SMBCグループで、三井住友銀行、三井住友カード、SMBC日興証券等が傘下です。
配当利回りは、株価2800円(2020.7.31終値)で、予想通り190円とすると、6.79%です。
配当方針
株主還元方針: 三井住友フィナンシャルグループに 、次の2点が記載されています。
- 配当は累進的とし、配当性向は2022年度までに40%を目指す
- 機動的な自己株式取得
配当性向は、40%を目指すとされています。明確に「累進的配当政策」とは記載されていませんが、「累進的」がそれに該当します。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2021.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2020.7.31時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 120.00 | --- |
2014.3 | 120.00 | 0% |
2015.3 | 140.00 | 17% |
2016.3 | 150.00 | 7% |
2017.3 | 150.00 | 0% |
2018.3 | 170.00 | 13% |
2019.3 | 180.00 | 6% |
2020.3 | 190.00 | 6% |
2021.3(予想) | 190.00 | 0% |
2013.3期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率は、維持の年も多いですが、6%~17%と着実に成長しています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2021.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,373,171,556株(2020.3末時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | 646,687 | 4,113,642 | 32% | 5% |
2017.3 | 706,519 | 5,095,724 | 29% | 4% |
2018.3 | 734,368 | 5,947,495 | 32% | 4% |
2019.3 | 726,681 | 5,602,502 | 34% | 4% |
2020.3 | 703,883 | 4,075,800 | 37% | 6% |
2021.3(予想) | 400,000 | --- | 65% | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期~2020.3期まで、29%~37%と徐々に目標の40%に近づいているのがわかります。100%以下で安全圏でした。
膨大なフリーCFがあるため、フリーCFベースでは、4%~6%と超安全圏でした。
直近の決算資料(2020.7)では、当期利益が400,000(百万円)の-43.2%と大幅減収が見込まれています。当期利益ベースの配当性向は65%と一気に高まります。
フリーCFの動向に留意が必要です。これまでの実績を見ると、今後も継続して配当が支払われると考えています。
三井住友Fは、2020.7.31時点で私も保有しています。「 三井住友フィナンシャルグループは、配当株投資の候補銘柄として有りか無しか? 」で個別分析しているので、業績等も見たい方は、どうぞ。
三菱商事
三菱商事(8058)の業種分類は、卸売業です。
三菱グループの中核で、天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ等幅広く事業展開されています。
配当利回りは、株価2119.5円(2020.7.31終値)で、予想通り134円とすると、6.32%です。
配当方針
配当情報 | 三菱商事に、2019年度から「累進配当」を方針としたことが記載されています。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2021.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2020.7.31時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 55.00 | --- |
2014.3 | 68.00 | 24% |
2015.3 | 70.00 | 3% |
2016.3 | 50.00 | -29% |
2017.3 | 80.00 | 60% |
2018.3 | 110.00 | 38% |
2019.3 | 125.00 | 14% |
2020.3 | 132.00 | 6% |
2021.3(予想) | 134.00 | 2% |
2019年度から累進的配当政策が始められましたが、2017.3期以降、一度も減配なく、増配のみとなっていました。
配当成長率は、2017.3期に50円→80円と60%も成長し、以降も大きく成長しています。2021.3期は2%が予想されています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2021.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,590,076,851株(2020.3末時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | -149,395 | 643,412 | --- | 12% |
2017.3 | 440,293 | 403,419 | 29% | 32% |
2018.3 | 560,173 | 424,899 | 31% | 41% |
2019.3 | 590,737 | 378,994 | 34% | 52% |
2020.3 | 535,353 | 349,001 | 39% | 60% |
2021.3(予想) | --- | --- | --- | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期はマイナスのため、算出できませんでした。
2017.3期~2020.3期まで、29%~39%と100%以下で安全圏でした。
フリーCFベースでは、12%~60%と100%以下で安全圏でした。しかしながら、徐々にフリーCFが減少傾向にあるため、直近では60%まで上昇しています。
直近の決算資料(2020.5)では、業績予想が開示されていません。しかしながら、配当予想は134円と増配予定で、「配当は出す」という意思を読み取れます。
ただし、次回の決算発表や、今後のフリーCFの動向には十分に留意しておきましょう。
日本エスコンが累進的配当政策を中止
日本エスコン(8892)の業種分類は、不動産業です。
配当利回りは、株価689円(2020.7.31終値)で、予想通り38円とすると、5.52%です。
2016年11月より「累進的配当政策」を掲げていました。しかしながら、直近のお知らせ(2020.7.31)にて、先行きが極めて予測困難なため、中止が決議されました。
ただし、「配当性向は30%以上」と設定されています。
直近の決算資料(2020.7)では、2020.12期2Q(1.1~6.30連結)の業績は、当期利益6,990(百万円)と対前年同期で+62.8%と好業績でした。通期でも、8,500(百万円)と+4.2%が予想されています。
配当も38円と増配が予想されています。
結構良さげなので、方針の中止は残念な限りです。今後の動向を気に留めておいても良いでしょう。
まとめ
日本株の配当投資をするなら、「累進的配当政策」を掲げる銘柄を知っておいて損はありません。
2020年は全体的に経済状況の悪化が予測されています。そんな中でも、着実に利益を上げ、配当を支払う企業があります。
ぜひ、候補銘柄の一つとして検討してみてください。
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