こんにちは、永松です。累進配当とは、原則「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」とする配当政策です。累進的配当政策と言います。
最悪でも配当維持されますし、株価が安いときに仕込めば、年々配当利回りが上昇します。
「そんな夢のような銘柄あるのか」と思いますが、あります。
どんな銘柄があるんだろうと気になっていませんか。
そんなあなたのために、累進的配当政策を掲げる日本株の紹介と配当分析を解説します。
次の5銘柄です。[2023.2.24時点]
- いちご(銘柄コード:2337)
- 伊藤忠商事(8001)
- 三菱商事(8058)
- 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
- 日本エスコン(8892)
それぞれについて、配当利回り、配当方針、配当実績、配当性向(当期利益ベース、フリーキャッシュフロー(CF)ベース)、配当成長率を分析しています。
配当投資の参考になれば、幸いです。
更新履歴
- 全体の情報をアップデートしました。[2023.2.24]
いちご
いちご(2337)の業種分類は、不動産業です。
事業は、アセットマネジメント(J-REIT、私募不動産ファンド)、心築(不動産賃貸、不動産再生)、クリーンエネルギー(太陽光)の3本柱です。
配当利回りは、株価293円(2023.2.24終値)で、予想通り7円とすると、2.39%です。
配当方針
配当情報 | IR情報 に、「累進的配当政策」を導入している旨がしっかりと記載されています。
また、「株主資本配当率(DOE)3%以上」を配当の基準にしています。配当性向は、一般に当期利益ベースで計算されるため、期ごとに配当金が変動します。
そのため、最近では、株主資本に対してどの程度配当を支払っているかを示すDOEを使う企業が増えています。
計算式は、次の通りです。
DOE(%)=年間配当額÷株主資本×100
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年1回
- 配当権利確定日:2月末(中間配当がある場合は、8月末)
2013.2期~2023.2期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2023.2.24時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.2 | 1.00 | --- |
2014.2 | 1.10 | 10% |
2015.2 | 1.30 | 18% |
2016.2 | 3.00 | 131% |
2017.2 | 5.00 | 67% |
2018.2 | 6.00 | 20% |
2019.2 | 7.00 | 17% |
2020.2 | 7.00 | 0% |
2021.2 | 7.00 | 0% |
2022.2 | 7.00 | 0% |
2023.2(予想) | 7.00 | 0% |
2013.2期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率も、2014.2期~2019.2期は、毎年10%以上増配されています。特に、2016.2期は、対前年比+131%とかなりの増配です。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
日本では、配当性向を当期利益ベースで算出します。
しかし、最近学んだこととして、米国株投資ではフリーCFベースで分析されます。私はこれを日本株にも応用しています。
フリーCFとは、営業CF+投資CFで算出される数値で、簡単に言えば、企業が自由に使える現金です。
フリーCFは、新たな設備投資、借入金の返済、内部留保、そして配当に使われます。そのため、配当株投資では重要な分析対象となりえます。
フリーCFが潤沢にあれば、配当の増額にも期待できます。一方、フリーCFが少ないのに配当を維持していたら、「そろそろ減配が近づいているかもしれない」と事前にリスクを察知できます。
詳しくは、書籍『「年100回配当」投資術ー日本人が知らない秘密の収入源』を読むと配当投資のレベルがグッと上がります。
2016.2期~2023.2期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、505,381,018株(2023.2.24時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.2 | 12,925 | -51,706 | 12% | --- |
2017.2 | 14,894 | 9,614 | 17% | 26% |
2018.2 | 14,018 | 4,958 | 22% | 61% |
2019.2 | 15,373 | 6,160 | 23% | 57% |
2020.2 | 8,201 | 1,629 | 43% | 217% |
2021.2 | 5,027 | -167 | 70% | --- |
2022.2 | 6,473 | 14,441 | 55% | 24% |
2023.2(予想) | 9,000 | --- | 39% | --- |
当期利益ベースでは、2016.2期~2022.2期まで、100%以下で安全圏でした。
フリーCFベースでは、2016.2期はマイナスのため、算出できませんでした。フリーCF以外の資金で、配当を支払っていたということです。
2017.2期~2019.2期は、100%以下で安全圏でした。
しかしながら、2020.2期は、217%と大幅に100%を上回っているため、注意水準でした。
2022.2期は、フリーCFが大幅に改善していました。
今後も、フリーCFの動向には十分に留意しておきましょう。
伊藤忠商事
伊藤忠商事(8001)の業種分類は、卸売業です。
非財閥系の総合商社大手で、繊維、食料、エネルギーなどを取り扱っています。
配当利回りは、株価4098円(2023.2.24終値)で、予想通り140円とすると、3.42%です。
配当方針
株主還元(配当・自己株式の取得)|伊藤忠商事株式会社に、配当と自己株式取得について記載されています。
配当では、以下3点について記載されています。
- 累進配当を継続
- ステップアップ下限配当の再導入(2022年度120円、2023年度140円)
- 2023年度までに配当性向30%
2022年3月期はすでに増配されていますが、さらに増配に積極的な姿勢が感じられます。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2023.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2023.2.24時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 40.00 | --- |
2014.3 | 46.00 | 15% |
2015.3 | 46.00 | 0% |
2016.3 | 50.00 | 9% |
2017.3 | 55.00 | 10% |
2018.3 | 70.00 | 27% |
2019.3 | 83.00 | 19% |
2020.3 | 85.00 | 2% |
2021.3 | 88.00 | 4% |
2022.3 | 110.00 | 25% |
2023.3(予想) | 140.00 | 27% |
2013.3期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率は、2015.3期のみ維持でしたが、その他は着実に成長しています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2023.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,584,889,504株(2022.2.19時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | 240,376 | -137,856 | 33% | --- |
2017.3 | 352,221 | 308,387 | 25% | 28% |
2018.3 | 400,333 | 131,862 | 28% | 84% |
2019.3 | 500,523 | 677,700 | 26% | 19% |
2020.3 | 501,322 | 629,367 | 27% | 21% |
2021.3 | 401,433 | 688,604 | 35% | 20% |
2022.3 | 820,269 | 839,800 | 21% | 21% |
2023.3(予想) | 800,000 | --- | 28% | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期~2022.3期まで、21%~35%とブレも少なく、100%以下で安全圏でした。
フリーCFベースでは、2016.3期はマイナスのため、算出できませんでした。
2017.3期~2021.3期は、20%~84%と100%以下で安全圏でした。
フリーCFの動向に留意が必要ですが、継続して配当が支払われると考えています。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループ(8316)の業種分類は、銀行業です。
SMBCグループで、三井住友銀行、三井住友カード、SMBC日興証券等が傘下です。
配当利回りは、株価5849円(2023.2.24終値)で、予想通り230円とすると、3.93%です。
配当方針
株主還元方針・配当情報に、次の2点が記載されています。
- 配当は累進的とし、配当性向は2022年度までに40%を目指す
- 機動的な自己株式取得
配当性向は、40%を目指すとされています。明確に「累進的配当政策」とは記載されていませんが、「累進的」がそれに該当します。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2023.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2023.2.24時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 120.00 | --- |
2014.3 | 120.00 | 0% |
2015.3 | 140.00 | 17% |
2016.3 | 150.00 | 7% |
2017.3 | 150.00 | 0% |
2018.3 | 170.00 | 13% |
2019.3 | 180.00 | 6% |
2020.3 | 190.00 | 6% |
2021.3 | 190.00 | 0% |
2022.3 | 210.00 | 11% |
2023.3(予想) | 230.00 | 10% |
2013.3期から一度も減配なく、累進的配当政策がきちんと守られていました。
配当成長率は、維持の年も多いですが、5%~17%と着実に成長しています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2022.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,374,691,194株(2023.2.24時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | 646,687 | 4,113,642 | 32% | 5% |
2017.3 | 706,519 | 5,095,724 | 29% | 4% |
2018.3 | 734,368 | 5,947,495 | 32% | 4% |
2019.3 | 726,681 | 5,602,502 | 34% | 4% |
2020.3 | 703,883 | 4,075,800 | 37% | 6% |
2021.3 | 512,812 | 11,116,073 | 51% | 2% |
2022.3 | 706,631 | -861,387 | 41% | --- |
2023.3(予想) | 770,000 | --- | 41% | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期~2022.3期まで、100%以下で安全圏でした。
膨大なフリーCFがあるため、フリーCFベースでは、2%~6%と超安全圏でした。
2022.3期は、フリーCFがマイナスに転じていますので、やや留意が必要です。
これまでの実績を見ると、今後も継続して配当が支払われると考えています。
三菱商事
三菱商事(8058)の業種分類は、卸売業です。
三菱グループの中核で、天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ等幅広く事業展開されています。
配当利回りは、株価4709円(2023.2.24終値)で、予想通り180円とすると、3.82%です。
配当方針
配当情報 | 三菱商事に、2019年度から「累進配当」を方針としたことが記載されています。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年2回
- 配当権利確定日:9.30(中間配当)、3.31(期末配当)
2013.3期~2023.3期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2023.2.24時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.3 | 55.00 | --- |
2014.3 | 68.00 | 24% |
2015.3 | 70.00 | 3% |
2016.3 | 50.00 | -29% |
2017.3 | 80.00 | 60% |
2018.3 | 110.00 | 38% |
2019.3 | 125.00 | 14% |
2020.3 | 132.00 | 6% |
2021.3 | 134.00 | 2% |
2022.3 | 150.00 | 12% |
2023.3(予想) | 180.00 | 20% |
2019年度から累進的配当政策が始められましたが、2017.3期以降、一度も減配なく、増配のみとなっていました。
配当成長率は、2017.3期に50円→80円と60%も成長し、以降も大きく成長しています。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.3期~2023.3期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、1,485,723,351株(2023.2.24時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.3 | -149,395 | 643,412 | --- | 12% |
2017.3 | 440,293 | 403,419 | 27% | 29% |
2018.3 | 560,173 | 424,899 | 29% | 38% |
2019.3 | 590,737 | 378,994 | 31% | 49% |
2020.3 | 535,353 | 349,001 | 37% | 56% |
2021.3 | 172,550 | 660,253 | 115% | 30% |
2022.3 | 937,529 | 888,294 | 24% | 25% |
2023.3(予想) | 1,150,000 | --- | 23% | --- |
当期利益ベースでは、2016.3期はマイナスのため、算出できませんでした。
2021.3期以外、23%~37%と100%以下で安全圏でした。
2021.3期は、当期利益が大幅に減少した結果、115%と注意水準になっていました。
一方、フリーCFベースでは、12%~56%と100%以下で安全圏でした。
2023.3期も安全圏に入ってくると考えられます。
日本エスコン
日本エスコン(8892)の業種分類は、不動産業です。
中部電力と業務資本提携をしています。
配当利回りは、株価840円(2023.2.24終値)で、予想通り38円とすると、4.52%です。
配当方針
2016年11月より「累進的配当政策」を掲げていました。しかしながら、2020.7.31のお知らせにて、先行きが極めて予測困難なため、中止が決議されました。
その後、2021.2.24の第4次中期経営計画「IDEAL to REAL 2023」策定のお知らせにて、累進的配当政策の継続が発表されました。
配当実績
配当に関する基本情報は、次の通りです。
- 配当回数:年1回
- 配当権利確定日:12.31(期末配当)
2013.12期~2023.12期(予想)の配当、及び配当成長率は次の通りです。[2023.2.24時点]
決算期 | 配当金 | 配当成長率 |
2013.12 | 1.00 | --- |
2014.12 | 3.00 | 200% |
2015.12 | 8.00 | 167% |
2016.12 | 15.00 | 88% |
2017.12 | 18.00 | 20% |
2018.12 | 32.00 | 78% |
2019.12 | 36.00 | 13% |
2020.12 | 38.00 | 6% |
2021.12 | 38.00 | 0% |
2022.12 | 38.00 | 0% |
2023.12(予想) | 38.00 | 0% |
2016年度から累進的配当政策が始められましたが、2017.12期以降、一度も減配はありませんでした。
配当性向(当期利益・フリーCFベース)
2016.12期~2023.12期の配当性向を算出すると、次の通りです。
発行済み株数は、98,580,887株(2023.2.24時点)で算出しています。算出した数値は、若干、公式サイトとが異なります。
決算期 | (百万円) | 配当性向 | ||
当期利益 | フリーCF | 当期利益 | フリーCF | |
2016.12 | 3,936 | -7,028 | 38% | --- |
2017.12 | 5,456 | -1,527 | 33% | --- |
2018.12 | 7,226 | -6,900 | 44% | --- |
2019.12 | 8,155 | -4,648 | 44% | --- |
2020.12 | 7,663 | -9,613 | 49% | --- |
2021.12 | 5,961 | -40,531 | 63% | --- |
2022.12 | 7,250 | -119 | 52% | --- |
2023.12(予想) | 9,400 | --- | 40% | --- |
当期利益ベースでは、2016.12期~2022.12期33%~63%と100%以下で安全圏でした。
一方、フリーCFベースでは、マイナスのため算出できませんでした。
今後、フリーCFの動向には十分に留意しておきましょう。
まとめ
日本株配当投資をするなら、「累進的配当政策」を掲げる銘柄を知っておいて損はありません。
ぜひ、候補銘柄の一つとして検討してみてください。
また、配当投資をしっかり学びたいなら、書籍『「年100回配当」投資術ー日本人が知らない秘密の収入源』がおすすめです。
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